ブロックチェーン+データ資産化：RDA はどのようにリアルワールドのデータを「生金」にするのか？

作者 ルル

リアルデータ資産（Real Data Assets、略称RDA）は、革新的な資産形態として、データ要素の価値化の道筋を再構築しています。2025年に上海データ取引所が提唱したRDAパラダイムは、データを資源から資本へと転換する探索にとどまらず、中国の「実数融合」戦略の下で実体経済とデジタル経済の深い統合を推進する実践でもあります。本稿では、RDAの起源、核心メカニズム、発展状況および関連コンセプト株に焦点を当て、その独自の価値を深く分析し、未来の可能性を展望します。

RDAの起源：中国のデータの価値化における新しいパラダイム

2025年、上海データ取引所（以下、上数所）は『RDA：データ要素の価値化探索』において初めてRDA概念を提唱しました。これは総経理の唐奇峰と研究院副院長の呂正英が中心となって実施しました。このパラダイムは国家の「新たな質の生産力」とデータ要素の市場化戦略に応じており、ブロックチェーンやIoTなどの技術を通じて、実体資産と運営データを深く統合し、「権利を確定でき、取引可能、資金調達可能」な新しい資産単位を形成することを目指しています。世界的なリアルワールドアセット（RWA）が資産のトークン化に重点を置いているのとは異なり、RDAはデータの真実性の検証と価値の向上を強調し、「実数融合」の独自の道を構築しています。

上数所はRDAをデータ価値化のコアエンジンとして位置付け、ブロックチェーン技術を通じて実体資産の全ライフサイクルデータを標準化された、取引可能なデジタル資産としてパッケージ化します。2025年4月、上数所は香港のWeb 3カーニバルでRDAパラダイムを正式に発表し、データがバックエンドリソースからフロントエンド資産へと移行することを示し、標準化された表への入力、登録、評価、取引、資金調達のルートを持つことを意味します。同年7月、上数所は「資本市場の新たな機会：RDA」非公開セミナーを開催し、国泰君安証券、海通証券、中信建投証券などの金融機関を引き付け、RDAの資本市場における応用の展望について共に議論し、後続プロジェクトの実現に向けた堅固な基盤を築きました。

RDAのコアメカニズム：データから「金資産」へ

RDAのコアは、技術を利用してデータを信頼できる流通可能な資産に変換することであり、その運営メカニズムは3つの段階を含みます：資産準備、資産発行、資産取引。資産準備段階では、データ資産シェル（Data Assets Shell、DAS）が実体資産の運営データや収益データなどを標準化されたデジタル資産としてパッケージ化し、権利証明、取引協定、資産管理モデルを内蔵しています。ブロックチェーン技術はデータの改ざんを防ぎ、三権分立の構造と司法証拠の通路がデータの真実性をさらに保障します。資産発行段階では、データサービスプロバイダーと金融機関が規制審査の下で資産のブロックチェーンへの登録と金融対象の発行を完了し、データが「金資産」の要求を満たすようにします。資産取引段階では、データ資産が国内外の資本市場を通じて流通し、企業に価値を創造します。

RDAは多様な資金調達チャネルをサポートし、企業に新しい資金源を提供します：

信貸ファイナンス：上数所が金融機関と提携し「数易貸」を導入、2024年の信用枠は1億元を超え、企業に低コストのファイナンス支援を提供します。

株式資金調達：データ資産を評価して出資し、会社の株式と引き換えに資本化運営を実現する。

証券化：データ資産ABS（資産担保証券）を通じて、将来のキャッシュフローを担保に証券を発行し、データを権利価値に変換します。

グローバル資金調達：海外資本市場との連携により、外国資本を呼び込み、国内実体経済の発展を支援します。

RDAの5つの特徴はその独自の価値を際立たせています。1つ目は実数融合で、データと実体資産が深く結びついて新しい資産形態を形成します。2つ目は真実の透明性で、ブロックチェーン技術が資産の全ライフサイクルを信頼できる追跡を実現します。3つ目は収益の信頼性で、スマートコントラクトが実際の運営収益をつなぎ、透明な分配を確保します。4つ目は価値の再構築で、データの限界コストが低く、再利用可能な特性を利用して資本市場と結びつけ、資産の価値を拡大します。5つ目はエコシステムの協調で、データ市場と資本市場を統合し、オープン型の価値エコシステムを構築します。これらの特徴により、RDAは実体経済と金融資本をつなぐ橋となり、企業に革新的な資金調達の道を提供します。

RDAの発展:理論から実践への飛躍

2025年に提案されて以来、RDAは理論的構想から迅速に実践的応用へと移行し、強力な発展の勢いを示しています。国家データ要素の市場化の「試験地」として、上海は政策の支援の下でRDAが実現されるコア地域となっています。上数所は、異分野の協力やプロジェクトの試行を通じて、複数の分野でRDAの応用を推進しています。以下はいくつかの代表的なプロジェクトです：

鉄鋼取引 RDA：上海鋼聯（300226.SZ）は、世界のコモディティデータ価格決定権のリーダーであり、鉄鋼データの世界市場シェアは70％を超えています。上数所プラットフォームを通じて、鉄鋼取引チェーンの安定コイン「STEEL-CNY」を発行しています。このプロジェクトは、ブロックチェーン技術を用いて鉄鋼取引データを封入し、貿易決済や債権分割をサポートし、手数料コストを0.15％にまで引き下げ、年間手数料収入の潜在能力は100億元を超えています。

海運データ RDA：中遠海科（002401.SZ）は、海運データの独占的な優位性を持ち、「船視宝」プラットフォームは5000以上の港をカバーしています。RDA化されたデータの評価は3倍に向上し、「貨運宝 CNY」ステーブルコインが東南アジアの運賃のリアルタイムでの人民元決済を実現するのを支えています。年間取引規模は500億元に達すると予想されています。

データ資産ABS：2025年8月21日、初のデータ資産活用ABSが上海証券取引所に成功上場しました。上数所は、コンプライアンス審査、科学的かつ厳密な評価体系、そして市場間連携メカニズムを含む全チェーンサポートを提供し、プロジェクトの準備から上場までのシームレスな接続を確保しました。これは、金融市場におけるRDAの画期的な応用を示しています。

7月22日、海南華鉄と上海データ取引所が共同設立した「設備運営および知能計算数ニューハブセンター」の除幕式が上海で行われ、世界初の設備運営RDAプロジェクトが開始されることが発表されました。発行規模は100億元に達する見込みで、両者がデータ要素の流通と設備運営、インテリジェントコンピューティングサービス分野で深い協力関係を築き、データ駆動型産業アップグレードの新しい道を共に探求することを示しています。

以下はRDA関連の概念株の包括的な整理であり、データ要素のインフラと技術サポート、取引プラットフォームとブロックチェーン技術、シーンアプリケーションと資産のトークン化、そして高い弾力性を持つ潜在的な対象をカバーしています。

データ要素基盤インフラと技術サポート：

トレース（300229.SZ）：NLP技術のリーダーであり、政府および金融データガバナンスの市場シェアは60％を超えています。AI大規模モデルのデータ受注は前年同期比180％増加し、RDAに高品質なデータクリーニングとアノテーションサービスを提供しています。

イー・ホワ・ルー（300212.SZ）：中央企業の背景を持つデータ湖オペレーターで、政務および医療データを100PB以上保存。国内初の政務データ資産証明書が実現し、2025年にはデータ資産の帳簿規模が50億元を超えると予想される。

三次元天地（301159.SZ）：上数所認証サービスプロバイダー、AI駆動データ自動ラベリング効率向上80%、RDAデータパッケージング標準の策定に参加、長江デルタの越境データ資産化の試行を支援。

取引プラットフォームとブロックチェーン技術：

上海鋼聯（300226.SZ）：世界的なコモディティデータ価格決定権のリーダー、「STEEL-CNY」ステーブルコインを発行し、RDAのコモディティ取引分野での応用を推進し、年佣金収入の潜在能力は10億元を超える。

広電運通（002152.SZ）：広州データ取引所の第3位株主（持株15％）、デジタル人民元ハードウェア端末は2000以上の銀行に対応、金のトークン化証明量は20トンを超え、新エネルギー資産のトークン化プロジェクトはすでに実施されています。

四方精创（300468.SZ）：ブロックチェーンのクロスボーダー決済技術プロバイダーであり、RDAのクロスボーダー流通をサポートし、取引処理速度は10万TPSに達し、データ資産のグローバル化に技術的支援を提供します。

シーンアプリケーションと資産トークン化：

中遠海科（002401.SZ）：航運データRDA化後、評価が3倍に向上。「貨運宝CNY」ステーブルコインは、跨境リアルタイム決済をサポートし、年間取引規模は500億元に達する見込み。

協鑫能科（002015.SZ）：光伏と蓄エネルギーのデータ資産化のリーダー、IDCと充電スタンドのデータがブロックチェーンに連携され、充電収益権のトークン化プロジェクトが実現し、資金調達コストが2-3ポイント低下しました。

視覚中国（000681.SZ）：世界最大の視覚著作権ライブラリー（2.7億枚の画像）を保有し、NFT化による権利確定が流動性を向上させ、著作権取引の分配モデルは粗利率が70％を超え、視覚データのRDA化分配メカニズムを探求しています。

世紀恒通（301428.SZ）：データサービスに焦点を当て、RDA関連のデータ資産化のパイロットに参加し、データ処理と取引サポートを提供します。

高弾性ポテンシャル対象：

雲赛智聯（600602.SH）：上海の国有資産の算力リースのRDA化を実現し、ブロックチェーン技術により算力リソースのリアルタイム監視を実現、算力資産のオンチェーン効率が50%向上、再評価の余地は300%に達します。

中新サイケ（002912.SZ）：データ収集カバレッジ率は80％を超え（ETCと交通量）、RDAデータソース供給能力が際立っており、技術面で年線を突破した後の潜在的な上昇幅は50％を超える。

上海物贸（600822.SH）：傘下の上海有色金属取引センターのデータ製品が上数所に登録され上場し、株価は四連続ストップ高を達成したが、2024年の総収益は451.7億元で、前年同期比42.59%減少し、データ資産取引の貢献は1%未満であり、動的PERは126.57倍に達し、業界平均水準（貿易会社及び工業品販売業界の平均19.30倍）を大きく上回っており、市場の熱狂は政策の恩恵期待に起因していることを反映している。

資本市場のRDAに対する熱意はその潜在能力を反映しているが、高評価リスクも伴っている。例えば、上海物貿の高いPERは市場がRDAに対して政策の恩恵に基づいていることを示しており、基本的な支えに基づいていない。RDAの国際化の探索も着実に進んでいる。上数所の国際地区は国境を越えたデータ交換の重要なプラットフォームとなり、30社以上の国際データ業者を引き寄せ、約200のデータ製品を上場した。この地区は「国際データ仲介代理モデル」を開創し、Stream Hatchetのeスポーツデータ分析やSpeedaのグローバルサプライチェーン情報などのリソースを導入し、同時に地元企業がデータを合法的に輸出するのを助けている。Amazon Web Services、Neudataなどとの協力を通じて、「技術インターフェース+データ業者ネットワーク」の堅固な構造を形成し、データのシームレスな伝送をサポートし、RDAが世界的なデータ資産化においてより大きな役割を果たす助けとなっている。

RDAの未来:機会と課題

RDAはデータの価値化における重要なエンジンとして、実体資産の資金調達に新たな道を提供しています。しかし、その発展は依然としていくつかの課題に直面しています。まず、RDAの取引規模は相対的に小さく、ビジネスモデルはまだ完全に成熟しておらず、高度に政策の推進とエコシステムの協調に依存しています。例えば、上海の物貿のRDAビジネスは外部エコシステムに制約されており、短期的には収益を大幅に向上させることが難しいです。次に、データの権利確定、標準化および価格設定メカニズムはまだ改善が必要であり、国境を越えた流通には国内外の規制要件のバランスが求められます。さらに、RDAプロジェクトの実行には業界を超えた協力が必要であり、技術、コンプライアンス、市場などの多方面の調整が関与し、実施の複雑さが増しています。

それにもかかわらず、RDAの未来の可能性は無視できません。実数統合制度の継続的な改善に伴い、RDAは以下の方向での突破を期待されています。

業界の拡大：商品、海運からスマート製造、物流、医療などの分野に拡大し、より多くの実体経済シーンをカバーします。

金融革新：データ資産のABSや株式ファイナンスなどのモデルを探索し、データの価値を解放し、企業の資金調達チャネルを拡大する。

国際化の発展：国際金融市場との連携を通じて、RDAのグローバルな流通を促進し、国内企業により多くの外国資本の支援を引き付ける。

エピローグ

RDAは、中国のデータ要素の市場化における革新的な実践として、データの価値化の道筋を探るだけでなく、実体経済とデジタル経済の融合に対する深い応答でもあります。2025年の理論提案から現在のプロジェクトの実施に至るまで、RDAはブロックチェーンなどの信頼できる技術を通じて、実データを「金資産」に転換し、企業に新たな資金調達の道を提供しています。データ源、技術サービス、取引プラットフォームなどの分野でのRDAの概念株は、資本市場の注目の焦点となっています。取引規模が小さいことやビジネスモデルが未成熟であるという課題に直面しながらも、RDAは政策の支援と技術の進展の後押しを受けて、徐々にその潜在能力を発揮しています。今後、RDAはデータ駆動型経済の転換において重要な力となることが期待されており、グローバルな資産のデジタル化の波に中国の知恵を提供し、新たな生産力の発展に強力な推進力を注入するでしょう。